【雑感】政治的対立軸の変遷について
近年のネット上を含む言論を見るに、財政政策をめぐる対立軸が右派・左派を形成しているように見える、という個人的な雑感を記録する。
もともと、日本の戦後の政治的対立軸は日米安保・憲法を軸にした対立であり、安保肯定・憲法改正が政党的には自民党で、その支持者が右派、そして、日米安保反対・護憲・平和主義社会党・共産党を中心とした左派であった。
この対立軸は冷戦崩壊や55年体制の崩壊、イデオロギー対立の衰退などから現在では変わってきていると言われるが、近年目立つのが財政政策をめぐる対立であると感じる。
つまり、下記の対立である。
- 右派:財政赤字を改善する必要なし、MMTによる金融政策とそれによる財政出動、公共事業を支持
- 左派:右派を否定、MMT否定
もちろん移民や外交政策、天皇制をめぐる対立もあるが、経済について上記のように特に右派がMMT支持に流れていることが特徴的であると思う。
なぜこのような政策の支持につながっているのか。
個人的な把握だが、政府に対する不信を持つ右派が存在することがその背景にあるのではないか。つまり、安倍政権を支持する体制支持的な右派と、そうではなく安倍政権も否定し、今の政府は間違っている、腐敗していると考える右派が存在し、後者の右派がMMT支持勢力なのではないか。
この勢力は、現政府、特に財務省が財政均衡に異常にこだわっており、これを愚かな政策だと考えており、MMT的な経済政策でも国家財政は破綻しない。そこが理解できていない政府は無知である、という主張をする。
その背景にあるのは、財務省を中心とした現政権に対する不信であり、一種の反知性主義と言っても良いと思われる。政府、官僚は無知である(もしくは旧来の政策にこだわり最新の経済理論が分かっていない)、そしてその他の政策も愚策ばかりである、という主張を行う。
現在の右派は本来の右派ではなく、もっと優秀で政治のできる人々は日の目を見ることができていないのだ、というのが主張である。
『専門知は、もういらないのか』でも、政府は無知であり自分たちこそ正しい答えを持っているのだ、と主張する様々な素人の存在が指摘されていた。そのような人々は、結論ありきで認知バイアスにハマっているため、議論が困難でどのような証拠も自分の意見を証明するために用いる。
そのため、政府批判だけでなく陰謀論や非科学にも引っかかりやすい。
現政権は無知で自分たちこそ正しい、という把握は右派に限った話ではないとは思う。
しかし、こうした反知性主義と、それと関連した(もしくは独立的?)政治への不信によって、MMT支持だけでなくさまざまな主張(移民排斥、排外主義、反中・嫌韓)が行われているように思われる。
いずれにしろ、おおむね知性が支持されていたと思われる戦後の右派・左派の対立に比べ、議論が困難になり分断が深まる現在の対立の方が、根深いものであるように感じる。