読書

山田英夫『マルチプルワーカー「複業」の時代―――働き方の新たな選択肢』(三笠書房)

ここ数年、副業に関するニュースが一気に多くなった。

厚生労働省のモデル就業規則が変わり、副業を解禁する会社も増え、実際に副業をしている会社員も多いのだという。

副業解禁の流れができたのは、

  • 労働期間の長期化と会社寿命の短命化→転職前提のキャリアが前提になる
  • 長期雇用モデルの崩壊→いつでも転職できるように自分の価値を高めておく必要性

などが主な要因だろう。

しかし、副業をただ単に「もっとお金を稼ぐ手段」と考えてしまって良いのだろうか?単に収入を増やすためだけならアルバイトと変わらない。そうではなく、経験、知識、人脈などの幅広い資産を蓄積するために副業を活用すべき。

そんなことが書かれているのが『マルチプルワーカー』である。

『マルチプルワーカー』に書かれていることは、副業に関するポイントの網羅的な整理であり、「これから副業をしたいけれど、何をしたら良いのか分からない」という会社員や、「会社で副業解禁にしようと言われているけれど、どんなルールにしたら良いか分からない」という人事部の人などには役立つ内容だと思った。

しかし、すでに副業をしている人やフリーランスで「複業」的な生き方をすでにしている人にとっては、内容の再確認になる程度だろうと思う。私も「複業」的な生き方をしているため、新たに得ることはほとんどなかった。

とは言え、これから解説する内容については、あらためて頭を整理することができたし、頭の整理をきかっけにいろんなアイディアが生まれた。

伏業、副業、幅業、複業

著者によると、副業は「ケイパビリティ(能力)」と「収入」の2つの軸によって、マトリクスにできると言う。

※ケイパビリティとは、経営学における人が持つ遂行能力のこと

それが以下のような図だ。

  • 伏業・・・ケイパビリティも収入も低く、会社に伏せて行うアルバイト的な副業。そのまま続けてもキャリアに繋がりにくい。
  • 副業・・・ケイパビリティは低いが会社に残って残業するよりも収入が良く、収入の補完、お小遣い稼ぎのために行うような仕事。
  • 幅業・・・ボランティア、NPO、プロボノなど、収入は大きくないが人脈形成やスキル、経験の習得、社会貢献などができる仕事。
  • 複業・・・ケイパビリティも収入も高い理想的な副業。

このような副業の整理は、自分の副業はどんな立ち位置だと考えられるか考えるきっかけになる。

フリーランスの複業

私の場合は、メインの仕事と並行してボランティアに近い「幅業」をしつつ「複業」的な仕事もしている。いずれもメイン収入には遠く及ばないが、将来への投資に確実に繋がっている。

フリーランスという立場では「複業」的な働き方は容易だが、会社員では難しいだろう。この本では、どちらかと言えば会社側に向けて、会社の成長のためにも「複業」をやりやすい環境を整えよう、と主張しているように見える。

『マルチプルワーカー』では「複業」の事例や実際に会社で導入する場合のポイントなどについて網羅的に解説されているため、これから複業をはじめたい人、会社で副業解禁に携わる人などには、おすすめできる内容であった。

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